この章では老子の「三寳」(さんぽう 三つの宝)について述べています。
一般的には仏教での三宝(佛・法・僧)のことを言いますが、老子は「慈、儉、先とならず」の三つを言っています。
天下皆謂我道大似不肖。 夫唯大故似不肖。 若肖、久矣其細。 夫我有三寳。 持而寳之。 一曰慈、二曰儉、三曰不敢爲天下先。 慈故能勇。 儉故能廣。 不敢爲天下先、故能成器長。 今舍慈且勇、舍儉且廣、舍後且先、死矣。 夫慈以戰則勝、以守則固。 天將救之、以慈衛之。
天下皆我が道を大にして不肖(ふしょう)に似たりと謂(い)ふ。 夫れ唯(ただ)大なるが故に不肖(ふしょう)に似たり。 若(も)し肖(に)なば、久しいかな其の細(さい)たること。 夫れ我れに三寳(さんぼう)有り。 持(じ)して之を寳とす。 一に曰(いわ)く慈(じ)、二に曰く儉(けん)、三に曰く敢えて天下の先(せん)と爲(な)らず。 慈なるが故に能(よ)く勇(ゆう)なり。 儉なる故に能(よ)く廣(くわう)なり。 敢えて天下の先と爲らず、故に能く器長(きちゃう)を成す。 今慈を舎(す)てて且(まさ)に勇ならんとし、儉を舎てて且に廣くあらんとし、後(おく)るるを舎てて且に先んぜんとすれば、死せん。 夫れ慈以(も)って戰えば則(すなわ)ち勝ち、以って守れば則ち固し。 天將(まさ)に之を救はんとす。 慈を以って之れを衛(まも)らん。