キャノングローバル戦略研究所研究主幹 瀬口清之さんのレポート

 今までにも種々情報提供をいただいておりますが、瀬口清之さんの最新の「米国欧州出張報告」(2025.5.26-6.14)です。

テーマは:「トランプ・ショックの実態と米欧専門家の見方 日米中関係 ヒアリング」

~第2次トランプ政権の政策は予想以上に予測不能、米欧間の溝はさらに深まる~

以下ご覧ください。

<主なポイント>

  • 第2次トランプ政権の特徴は次の3点。①行動基準はGrievance(自分を尊重しない相手に対する不満)、②予測不能性の高まり、③米国を破壊しようとしていること。
  • 2月時点ではトランプ政権の政策運営は、副作用への対応を余儀なくされ、夏場以降落ち着くとの見方が多かった。しかし、最近は「トランプ政権はいつまで経っても予測不能の状態が続き、一定の方向に落ち着くことはない」との見方に変化。
  • ジュネーブでの米中関税協議で貿易戦争の暫定休戦合意に至ったにもかかわらず、その直後に米国商務部は中国製AI向け半導体に対する厳しい規制を発表して政権内の非整合的な政策運営の実態が露呈。中国はこれを受けてレアアースの対米輸出禁止措置の解除を見送った。米国側にもこの中国の対応は当然の帰結との見方がある。
  • 米国際貿易裁判所は5月、相互関税が「違法で無効」と判断。これに関して最高裁の最終判断が下されるのは9~10月頃と予想されており、その後の見通しは不透明。
  • トランプ政権はハーバード大学等に対してDEI施策の見直しや「反ユダヤ主義的活動」の取り締まり強化を求めたが、ハーバード大学はこの要求を拒絶。これに対してトランプ政権は同大の留学生受け入れ資格を停止。同大は政権を提訴し、マサチューセッツ州の連邦地裁が即座に差し止め命令を出した。こちらも先行き不透明。
  • トランプ政権は上記と同様の理由から大学に対する補助金の大幅削減方針を発表。各大学は研究活動の中止・縮小、研究者の人員整理、出張予算の削減等を余儀なくされている。これにより、多くの大学教授、研究者等が米国から海外への転出を検討中。
  • 欧州の専門家・有識者のトランプ政権に対する見方は以下のとおり。①トランプ政権は民主主義を破壊、価値観の共有は不可能、②トランプ大統領もトランプ政権の政策も予測不能、③もはや米国を信頼することはできない、④大西洋同盟は終わった。
  • NATOは6月25日に首脳会議を開催し、加盟国の国防費支出を2035年までにGDP対比5%に引き上げることで合意。ただし、独仏、ポーランド、バルト3国等は積極的、スペイン、ポルトガル等は消極的など各国の対応姿勢にばらつきがある。
  • 対中デカップリングを実行に移せば、米国経済が大きなダメージを受け、選挙民の不満が爆発する。対中関税政策のブレはそれを示している。このためデカップリング政策は非現実的というのが米中経済関係に詳しい専門家のほぼ一致した見方。
  • 関税等をめぐるトランプ・ショックにより改めて世界各国が協力して自由貿易体制を守っていくことの重要性が一段と切実に認識されるようになっている。
  • 米国内では、過度のDEI施策やAffirmative Actionを見直す動きが増えている。

▼キャノングローバル戦略研究所研究主幹 瀬口清之さん  以下に詳細レポート

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坂城町長 山村ひろし