先月、六本木で開催された第7回TOPOS会議の際に、野中郁次郎先生からまだ発売前だった 「国家経営の本質」 という本をいただきました。
(日本経済新聞出版社)
この本は、野中郁次郎(一橋大学名誉教授)、戸部良一(帝京大学教授)、寺本義也(ハリウッド大学教授)の共著ですが、「失敗の本質」、「戦略の本質」に続く姉妹編です。
「政治の真のリーダーシップとは、明確な国家像を描き、その実現のための具体的政策を提示し、政策実施の基盤を構築して、その実施に支持者を巻き込み、人々を牽引してゆく力である。」
本書は、1980年代を歴史的大転換期と位置づけ、同時期に国際的な観点で国家を運営した、サッチャー、レーガン、中曽根、コール、ゴルバチョフ、~小平といったリーダーたちを、「国家経営」という観点からとらえ、リーダーシップの本質を明らかにしています。
6人の政治家が、危機をどのように逆手にとって再生に挑んだのか、あるいはなぜ改革に失敗してしまったのかに焦点を当てて、分析しています。
本書が書かれたきっかけは、東日本大震災の際に、日本の政治家のリスク管理力の欠如、リーダーシップの不在に危機感を抱き、『失敗の本質』『戦略の本質』の主要メンバーが再結集し、既刊の2冊では明らかにできなかった国家の指導者に必要とされる洞察力とは何かを追及しています。
この政治家6人に共通しているのは、全員が、野中先生の言われる「共通善」を持ち、しっかりとした歴史認識を持ち、理想主義的なプラグマティズムを持っていることです。
ところが、昨今の現実で、マス・デモクラシーにおいては、多くの人は、リーダーの歴史的構想力などには無頓着で、リーダーが掲げる「共通善」にも関心を寄せず、その実践的行動を吟味することもなく、目先の利害を言い立てる政治家にしか関心を持たないと指摘しています。
現在、日本では正に年末総選挙一色に染まっています。 本来は、このような観点からの政策論議が最も求められているのですが、残念ながら、選挙目的の近視眼的な論争に終始しているように思えます。
いずれにしましても、本著は3名の著者が温めてきた戦略論の集大成であります。
また、野中先生が今年春にアイゼンハワーを取り上げ、出版された 「史上最大の決断」 に続く素晴らしい名著です。
多くの方に読まれることを希望します。
左:野中郁次郎先生
坂城町長 山村ひろし