昨日(11月27日)、六本木ヒルズで開催された 「第7回TOPOS会議」 に出席しました。
TOPOS会議は野中郁次郎一橋大学名誉教授が発起人となって始められた、世界的な錚々たる賢者を集めて年2回開催される「知の場」(TOPOS)です。
今回で7回目となりました。
今回のテーマは 『賢慮資本主義宣言・・日本発の「資本主義」を構想する』 という壮大なものです。 以下、内容について若干ですがコメントします。
賢慮資本主義というのは現在、種々の問題点があらわになり、限界が囁かれている現今の資本主義に対して、野中郁次郎先生が唱えている、「人間中心の精神・価値観に基づいた経済や経営のあり方、いわゆる、賢慮(共通善実践のための智慧)に基づく資本主義(prudence-based capitalism、あるいはワイズキャピタリズム)のことを指します。
今回のトポス会議は3つのセッションに分かれます。(トポス1からトポス3)
トポス1:は、≪世界経済の挑戦≫のセッションで、まず、吉川洋教授が近世の経済学の流れを総括し、
「経済成長=パイを増やすこと」、「所得分配=パイを分けること」と整理し、「経済成長」は、効率性(価値との相対性)が求められ、「所得分配」は正義・平等が求められ、カルチャーとの関係が問題となる。
ここで重要なのは、「所得分配」に力点を置くよりは、経済成長により全体のパイを増やすことが大切であるということでした。
また、ヘンリー・ミンツバーグは日本の企業のアドバンテージは高齢化、環境など種々の課題を抱えているからこそチャンスがある。イノベーションの宝の山であると述べています。
トポス3:で印象に残ったのは、田中弥生教授の話でした。 田中教授は若い頃からドラッカーの弟子となり、数々のドラッカーに関する著作や翻訳をされています。 ドラッカーは日本に大変な興味を持った経営学者ですが、その理由として、日本の企業が「経済」と「コミュニティー」両方の役割を果たしているからであったということです。
また、江戸文化にも大変関心を持っており、江戸が「一人ひとりが位置と役割を持つ自由社会」であったからだということです。
また、ユダヤ人であったドラッカーがナチスの迫害を受けて米国に移ったわけですが、ドイツで起きた最大の罪は「無関心の罪」であったということです。
トポス会議の最後の野中郁次郎先生の総括は以下の通りです。
「毛沢東はマルキシズムは単なる方法論だと言っている。イデオロギー論争より方法論の方が建設的である。 先日、ハイアールのCEO、チャン・ルエミンにあった際に、チャン・ルエミンは8万人の従業員を全員CEOにしたいと言っていた。8万人の社員を2000のベンチャー企業に分け任せる。本社はひたすらサポートに徹するということであった。もはや、通常のハイアラキーなどは眼中になかった。チャン・ルエミンは松下幸之助、稲盛和夫などよく研究していた。
賢慮資本主義の国家は全員の知を総動員する国家である。実践知により新たな環境、コンテクスト(文脈)が出てくる。やり抜く力が何より必要となる。また、「物語・ストーリー」を描くことが必要。文学では起承転結があるが現実の戦略はオープンエンド(連続ドラマ)である。」ということです。 難しいですね。
久しぶりの面々、左から:野中郁次郎先生、紺野登先生
右:田中 弥生 (独)大学評価・学位授与機構教授
プログラム
13時~13時10分>
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プロローグ>
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13時10分~14時40分>
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セッション1: 世界経済の挑戦>
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14時50分~16時30分>
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セッション2: 賢慮資本主義の可能性>
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16時30分~16時45分>
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休憩>
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16時45分~18時>
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セッション3: 実践知経営がもたらす賢慮資本主義>
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18時~18時30分>
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総括: 野中 郁次郎>
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18時30分~20時30分>
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ネットワーキング・セッション>
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登壇者
トポス1:≪世界経済の挑戦≫
吉川 洋 東京大学大学院経済学研究科教授
太子堂正称 東洋大学経済学部准教授
ヘンリー・ミンツバーグ マギル大学教授【ビデオ・メッセージ】
ジェームス・K・ガルブレイス テキサス大学オースティン校教授【ビデオ・メッセージ】
トポス2:賢慮資本主義の可能性≫
西部邁 評論家 東京大学教養学部前教授
藤井聡 京都大学大学院工学研究科教授
ジェームス・K・ガルブレイス テキサス大学オースティン校教授【ビデオ・メッセージ】
トポス3:≪実践知経営がもたらす賢慮資本主義≫
三村浩一 3Mジャパン(株)代表取締役社長
田中 弥生 (独)大学評価・学位授与機構教授
舩橋晴雄 シリウス・インスティテュート(株)代表取締役