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成人式挨拶(平成25年8月15日)
皆さま今日は。
ただ今ご紹介いただいた坂城町長の山村です。
本年、成人を迎えられた皆様おめでとうございます。
一言ご挨拶を申し上げます。
また、本日、ご多用のところ本式典においで頂いた、柳澤澄坂城町議会議長殿を始め多くのご来賓の皆様に御礼を申し上げます。
さて、本日、成人式を迎えられた皆様の中にはすでに社会に出て働かれておられる方、学生の方、働きながら勉強をされておられる方々がおられます。
又、坂城の中で家業を継がれておられる方、遠く坂城をでて活躍されておられる方々などいろいろな立場で本日お出でになっておられると思います。
坂城町では、例年、8月15日の終戦記念日に成人式を行っております。
先ほど黙祷をしていただきましたが、これは戦没者の皆様に対するものだけでなく、すでに2年半を経過した東日本大震災、長野県北部大地震など大変大きな災害で被害を受けられた方々に対するものでもあります。
また、災害という意味では、本年も日本各地で集中豪雨による被害、あるいは猛烈な暑さ、まさに異常気象と言われることが起き続けています。
幸い坂城町ではここ数年大きな災害はありませんが、いつ何時訪れるかもしれない災害に対して万全の準備を怠ることはできません。
本日の会場後方で被災を受けられた方々への義援金の受付を行っております。
また、坂城ライオンズクラブの皆さんがアイバンク(献眼)の登録も行われておられますのでご協力いただければ幸いです。
さて、皆さんが生まれ育って来られた平成は今年で25年となったわけでありますが、この間「失われた20年」「不況、デフレの20年」と言われ続けてきたわけでありその中で皆さんは生きてこられたわけであります。
昨年の今頃は野田前首相が、消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法を可決・成立させました。
民主党、野田政権は遠い昔のような気がしますが、わずか1年前のことであります。
歴史というものはこのようにどんどん上から塗り重ねられて行くものであります。
昨年末の総選挙で圧倒的多数の中で自民党、公明党の連立政権が成立し安倍内閣が発足し、早くも9ヶ月が過ぎ、また、先月の参院議員選挙でもこの流れの中、民主党の大敗、自民、公明の大勝という形となり、参議院でのねじれが解消されました。
経済成長率もようやく上向き始め、新たな時代への息吹が感じられるようになりました。
皆様方はこのなか、まさに歴史の大きな節目の中で成人式を迎えられたことになります。
本日、8月15日は、約310万人と言われる大勢の戦没者の方々の命を失った第二世界大戦が終結し今年で68年目を迎えました。
本日、成人式を迎えられた皆様方にも、もう一度先の大戦についての歴史を学んでいただきたいと切に希望します。
毎年お話をさせていただいているのですが、皆様は人の命の大切さ、ご両親から頂いたこの命の大切さについてどう考えておられるでしょうか。
私は「命」は大自然からお借りした大切な「宝物」だと思っています。
皆さんの命は皆さんのご両親が突然作り出したものではありません。
皆さんのご両親、ご両親のご両親、どんどん遡れば地球誕生から約46億年、宇宙の起源から考えれば約130億年前から営々と皆様のDNAが脈々と続いてきているわけであります。
大自然からお借りした「命」を立派に立派に磨き上げ再び大自然にお返ししなくてはならないのです。
仮に、皆さんが友人からゲーム機を借りたとします、これを傷だらけにして汚して、きたないままで返したら皆さんの友人は何と思うでしょう。
借りた時以上に見事に磨き上げピカピカにして返したら皆さんの友人は何と喜ぶことでしょう。皆さんの「命」もこのようにピカピカにして命を全うし、大自然にお返ししなくてはならないのです。
今から70年前、戦時中では成人するということは即、戦場に行くということでありました。敵と戦うということであります。見も知らぬ人間の命を奪う戦いをせざるを得ないということであります。
一昨年の成人式の際に私は皆さんと同年代で、航空特攻隊として昭和20年まさに終戦の年に、国家に命をささげた二人の若い兵隊の遺言を読みました。
また、昨年は、上原良司さんという南安住郡穂高町に生まれ、松本中学校(現、松本深志高校)を卒業し、慶応義塾大学の経済学部へ進み昭和20年5月沖縄嘉手納湾上で米海軍機動部隊に突入戦死した方の遺言書を読みました。
今年は、このような遺書を読むことはいたしませんが、たまたま、現在、戦争に関連した映画がいくつか上映されていますので、この点に関してすこしお話をさせていただきます。
まず、「風立ちぬ」です。 ・・・風立ちぬ、いざ生きめやも・・・
すでにご覧になった方が多くいらっしゃると思いますが、宮 駿監督のアニメで、昭和12年に発表した堀辰雄の小説「風立ちぬ」と零戦を開発した堀越二郎の二人を合体し、新たな「二郎」を創りこの主人公を中心にした素晴らしいアニメ作品であります。
宮崎駿監督の言によれば 「自分の作ったアニメを見て初めて泣いた」 という作品だそうです。
昭和10年ころというのはまだまだ本格的な戦争突入以前で、そこそこ民主主義が残っていて、文化的にも素晴らしい時代であったと言われています。
この合体した「二郎」には、宮 駿さん自身もあわせ作られているのでしょう。
反戦のアニメではありますがフィクションと事実が折り重ねられた素晴らしい夢のある作品でもあります。
二郎の同僚の本庄と二郎が交わした会話、「俺たちは20年先のカメを追いかけるアキレスだ」という言葉にこの時代の日本の若者の意気込みが感じられます。
また、最後の部分で、夢の中に出てくるイタリアの飛行機製作者カプローニ伯爵が二郎に「君の10年はどうだったかね。力を尽くしたかね」の質問に二郎が「はい!終わりはズタズタでした」というセリフは非常に印象的です。
二郎が設計した零戦は名機と言われながらその優位を保ったのはわずか3年でしかなく、最終的には「飛び立った零戦は一機も戻ってこなかった」わけであります。
また、主人公のセリフはみなさんよくご存知の「エヴァンゲリオン」の監督をされている庵野秀明氏が話されており大変新鮮な感じがいたしました。
ところで、詳細は決まっておりませんが、来年、春に坂城町の鉄の展示館で「エヴァンゲリオン展」を開催する予定にしております。
楽しみにしてください。
さて、是非、皆さんには、今年成人式を迎えられたのを期に、「風立ちぬ」をはじめ、「終戦のエンペラー」、「少年H」をもあわせてご覧になったらと思いますし、百田尚樹さんの「永遠のゼロ」もお読みになられると素晴らしいと思います。
さて、ここから先は毎年申し上げているところでありますが、もう少しお聞きください。
「後生畏るべし」という言葉があります。これは、論語にある孔子の言葉で、「若者は大きな力を発揮する可能性を秘めているから、年下の者には敬意を持つべきだ」という意味です。いい言葉ですね。
その正反対によくない言葉は「今時の若い者は…」と若者を批判する言葉です。 なぜ年寄りがよくこのような言い方をするのかというと、一つには、新しい価値観についていけないことが挙げられます。
もう一つは、自分の世代の実績を否定されたくない、あるいは、昔の良い思い出だけを残したいという人間の心理です。だから、今よりも昔の方が良かったかのように錯覚するのです。
「今時の若い者は…」という批判は、いつの時代にも出てきますね。
数千年前のメソポタミヤの遺跡やプラトンも言っているようですが、もし、年寄りがそう感じるのが正しくて、どの時代もその前の時代よりも悪くなっているのであれば、世の中は太古の昔からどんどん悪くなり続けてきたはずですね。確かに、現在、人口問題、環境問題、原発問題、など、昔にはなかった問題が出てきています。しかし、人類は必ずそういう問題を乗り越えてきました。
大切なのは物事の本質をとらえ、しっかりとした未来を見据えることが出来るかです。
「物に本末あり、ことに終始あり」、物事の何がもとで何が枝葉末節かを常に考え、何から初めに手を付け、何を最後に行うかなどの順序付けが大切です。
常に物事の本質を考え行動しなければなりません。
そうすれば、皆様が築く未来は大いに明るい希望の持てる世の中になります。
「命」を大切にし前向きにチャレンジして頂きたいと思います。
本日、成人式を迎えられた皆様方の今後の益々のご活躍に期待し、成人式のご挨拶とさせていただきます。
平成25年8月15日 坂城町長 山村弘
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成人式の写真など以下の坂城町ホームページより
坂城町長 山村ひろし