前章は、老子の中でも一番長い章でしたが、この章は一番短い章ですね。
しかしながら、この章も老子の本質が語られています。 この章はいわば老子の「生死論」とでも言えます。 冒頭の「反」は反対というより、「もとに戻る、立ち戻る」という意味です。
反者道之動、弱者道之用。天下萬物生於有。有生於無。
反(はん)は道の動(どう)、弱(じゃく)は道の用なり。 天下の萬物有(う)より生じ、有は無より生ず。
常に根源に立ち戻るのが道の動きなのです。 また、「道」は一見、弱々しく見えても常に柔軟に働きつづけます。 天下のすべての萬物は、「有(う)」、何かしらの存在から生まれてきますが、その「有」そのものは「無」といわれるすべての根源としての「道」から生まれてきます。
この章は私にとって大変大切にしている章です。
私たちの人生は、「道」から「出生」し、人それぞれの人生を経験し、「入寂」します。 私たちの人生はいわば「道」からお借りして、「道」にお返しするようなものです。 従って、大切に、大切に磨き上げてお返ししなくてはならないのです。
このような話をいつも学生、若者、あるいはお年寄りにも話してきました。
坂城町長 山村ひろし