この章は老子の 「死生観」 を考える意味で重要な章です。
人生は 「道」(大自然)から出生し、「道」 へ入滅する。 命は 「道」 からお借りしたものなのだから大切にしなくてはならない。
磨きに磨いてお返しするものだと思います。
従って、その大切な命を粗末に扱ったり、むやみに捨ててはいけない。
出生入死。 生之徒十有三、死之徒十有三。 人之生動之死地亦十有三。 夫何故。以其生生之厚。 蓋聞、善攝生者、陸行不遇兕虎、入軍不被甲兵。 兕無所投其角、虎無所措其爪、兵無所容其刃。 夫何故。 以其無死地。
出でて生き入りて死す。 生の徒、十に三有り。 死の徒、十に三有り。 人の生、動いて死地に之(ゆ)くもの、 十に三有り。 夫(そ)れ何故ぞや。 其の生を生とするの厚きを以(も)ってなり。 蓋(けだ)し聞く、善く生を摂する者は、陸行(りっこう)して兕虎(じこ)に遇わず。 軍に入りて甲兵を被(かうむ)らず。 兕(じ)はその角(つの)を投ずる無く、虎は爪を措(お)く所無く、兵は其の刃(やいば)を容(い)るる所無し、と。 夫(そ)れ何(なに)故(ゆゑ)ぞや。 其の死地(しち)無きを以ってなり。
人間、生を受けて生まれ、やがて死にます。 命を全うして幸せな人生を送れる人が十人中三人。 不幸にも若く死んでしまう人が十人中三人。 わざわざ死に行く人が十人中三人。 それはなぜでしょうか。 あまりにも生に対する執着が強過ぎるからなのです。 聞くところによれば、自分の生き方をうまく扱える人は、歩いて旅をしても虎や兕(じ)という獣(一角獣)に会うことがないそうです。 軍隊に入っても武器で身を固める必要もありません。 虎にあっても虎が爪を立てることも無く、敵兵も攻撃しようとしないのだそうです。 それはどうしてなのかというと、命に執着することが無いからです。
生に対しても「無為自然」の生き方が大切なようです。
坂城町長 山村ひろし
この記事を拝読して、「良寛語録」の次の一節を連想いたしました。
災難に逢う時節には災難に逢うがよく候
死ぬ時節には死ぬが良く候
是は是災難をのがるゝ妙法にて候