坂城甚句

先日、坂城町四ツ屋区長の宮嶋徳一郎さんが、「坂城甚句」の収録されたCDを持ってこられました。

暫く前に、レコードプレイヤーを持ってないかとのお問い合わせがあり、プレイヤーをお貸ししたところ、早速、LPから収録されCDに入れてお持ちいただきました。

坂城甚句は全部で33小節(曲)あるようなのですが、LPに収録されていたのは5曲で、多分代表的なものをピックアップしたものと思われます。

「坂城甚句」についての解説が坂城町「ふるさと探訪」(平成14年5月)に出ていましたので以下、ご紹介します。

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《坂城甚句について》 坂城小学校 剣持泰典

(ふるさと探訪 PART38  平成14年5月27日)

「坂城甚句」は、北国街道の宿場町であった坂木宿で旅人を相手に酒席で歌ってきた唄でした。

二上がり調子の三味線に転がすような太鼓の伴奏に乗って歌われます。

かつて、こういう宿場では、同様の唄が歌われてきました。県内では、本調子甚句の 「長久保甚句」(小県郡長門町) や 「塩尻甚句」(塩尻市) の系統と、二上がり甚句の 「塩田甚句」(北佐久郡浅科村) の系統の伝承があります。

この「坂城甚句」は後者の二上がり甚句の系統にあたります。

そもそも甚句とは、七七七五調の詞形を持つ日本民謡の代表的なもので、酒宴での唄やや盆踊り唄等、広く歌われてきたものでありました。

一方、「坂木甚句」 の源流である二上がり甚句は、日光街道最初の宿場であった千住(東京都足立区千住)で歌われていた甚句で 「千住節」 とか 「千住甚句」 等と呼ばれたものでした。これが中仙道から各地へ大流行したものであると思われます。

寡聞では前述の宿場唄以外に 「見沼通船堀唄」(埼玉県) 「越名の舟唄」(栃木県) 「新潟二上り甚句」(新潟県) 「郡上踊り」(岐阜県)等があります。

「坂城甚句」は、

~坂木よいとこ 何時来て見ても

三味や太鼓の 音ばかり

~坂木よいとこ 御天領育ち

昔ゃお品で 長羽織

というような坂木宿らしい歌詞で唄われてきました。

また、三味線の手は軽快なリズムですが、唄のメロディーになぞるように即興的に変化させて弾かれるもので、決して楽な手付けではありません。独特なアクセントの付け方によって、大変面白いアンサンブルになっています。

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さて、宮嶋徳一郎さんに頂いたCDの5小節(曲)は以下の通りです。

(歌い手は、坂木甚句保存会の関鶴吉さん)

・ハアー 坂木よいとこ (ヨーヨ) 御天領育ち (サッサーイ)

昔やお品で 長羽織 (キタサッサ ヨイサッサ)

・ハアー 北に聳ゆる 葛尾山は 昔村上 お城跡

・ハアー ここは御天領 宿場の町よ 加賀のお槍の 通り道

・ハアー 北に葛尾 西には千曲 中に栄ゆる 坂木里

・ハアー 送りましょうか 送らせましょか せめて四ツ屋の 清水まで

なお、この 「清水まで」 とは、四ツ屋にある、「甘泉」 のことで、男谷燕斎が揮毫した石碑も有名です。

かつてはここから素晴らしい名水が湧き出ていました。

今年7月に、四ツ屋区の皆さんのご尽力で、もとの場所から少し南へ移動した交差点部分に設置し、屋根もつけ誰からも見やすい位置に整えていただきました。 感謝です。

「甘泉」 の状況と由来

さて、以下のサイトをクリックしていただくと 「坂城甚句」 が始まります。 お楽しみください。

http://www.town.sakaki.nagano.jp/dekigoto/ssakaki-jinku.mp3

尚、坂木甚句の全曲は以下の通りです。

○ハァー 坂木よいとこ(ヨーヨー)  御天領育ち(サッサーイ)
      昔ゃお品で 長羽織 (キタサッサ ヨイサッサ)
                           ※以下、掛け声同様

○ハァー 坂木よいとこ いつ来てみて  三味線や太鼓の 音ばかり
○ハァー 浅い川なら 膝までまくる  深くなるほど 股を出す
○ハァー あなた百まで わしゃ九十九まで  ともに白髪の 生えるまで
○ハァー 惚れて通えば 千里も一里  会わずに帰れば また千里
 
○ハァー お嬶とってくれよ 朝草刈りに  一駄ン刈る草 二駄ン刈る
 
○ハァー この家屋形は 目出度い屋形  鶴と亀とが 舞い遊ぶ
 
○ハァー さあさ皆さま お歌いなされ  唄で御器量が 下がりゃせぬ
 
○ハァー この家座敷で 歌わぬ人は  男よいのか 気取るのか
 
○ハァー 一夜一夜に 枕が変わる  枕変わらぬ 床欲しや
 
○ハァー 昨夜したせいか 頭が痛い  二度とやるまい 箱枕
○ハァー 無銭客(おけら)返せば また来るおけら  今年ゃおけらの 大当り
 
○ハァー 烏鳴け鳴け あの町の屋根で  嫁に行かずに 婿にしず
○ハァー 坂木照る照る 追分曇る 花のお江戸は 雨が降る
○ハァー わたしの心と 横吹山は  外に木(気)はない 松(待つ)ばかり
○ハァー 送りましょうか 送らせましょか  せめて四ツ屋の 清水まで
○ハァー 坂木出抜けて 四ツ屋の清水  飲んで別れた こともある
○ハァー 千曲川さえ 竿さしゃ届く  なぜに届かぬ 我が思い
○ハァー 坂木坂木と 来てみれば 西も東も 山ばかり
○ハァー 坂木よいとこ 昔は宿場  加賀のお槍の 通り道
○ハァー 坂木よいとこ 汽車さえ停まる  若い衆泊まるも 無理はない
 
○ハァー ここは御天領 宿場の町よ  加賀のお槍の 通り道
 
○ハァー 葛尾山見りゃ 恋してならぬ  ことにあの娘が いるじゃもの
○ハァー 坂木遊郭 なれどやでも あの娘ひとりは 残したい
 
○ハァー 北に葛尾 西には千曲 中に栄ゆる 坂木里
 
○ハァー 北に聳ゆる 葛尾山は  昔村上 お城跡
○ハァー 昔御天領で 栄えた宿は  今も甚句で 賑わしや
○ハァー 昔御天領 坂木の里は  肩で風切る 長羽織
○ハァー 山じゃ葛尾 川では千曲  里の坂木は 蚕処
 
○ハァー 坂木よいとこ お蚕処 娘やりたい 桑摘みに
○ハァー 遊郭の 梯子段をば ストトントンと  登る心地で 暮らしたい
○ハァー あの声で とかげ食うかや 山時鳥  人は見かけに よらぬもの
○ハァー ひやかしが 雨に降られて 梯子に座り  煙草つけろと ぬかしゃがる

 坂城町長 山村ひろし

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