坂城の100人 第33回目は源顕清

 先日、「村上海賊の娘」に関して記述しましたが、信濃村上氏の祖でもあり村上水軍(海賊)の祖とも考えられる源顕清について、鉄の展示館宮下学芸員に記述してもらいましたので以下掲載いたします。ご覧ください。(多少、長文です。)

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信濃村上氏と村上水軍の祖?「源顕清」
 
「坂城の100人」の記念となる1回目に登場した人物は、信濃村上氏の祖と考えられている「源盛清」でした。
                  
盛清については、前述したように平安期の第一級史料である『中右記』によって、寛治8年(1094年)に起きた白河上皇呪詛事件により、信濃国(村上郷と推定)に配流され、盛清の子孫が村上郷を本拠として、以後の信濃村上氏の繁衍につながっていく大きなきっかけを作った人物として紹介しました。
                  
(源盛清について)
(関連して橋本治先生からいただいた手紙)
                         
しかしながら、この『中右記』の記述が発見される以前は、長らく信濃村上氏の始祖は、今回紹介する源顕清とされていました。
 その論拠となっていたのは、姓氏調査の基本図書で南北朝時代から室町初期に編纂されてと考えられる『尊卑分脈』の記述によります。これによると信濃国に配流されたのは顕清で、盛清は顕清の弟仲清の子とされています。そして、信濃村上氏として村上姓を初めて名のった村上為国(9回目に紹介)は、この顕清の実子と記述されています。
                          
 信濃村上氏の発祥に関しては、尊卑分脈以外に知る手だてが無かったため、おそらく何百年にもわたって、この地域では村上氏の祖は顕清と思われてきたのですが、戦後の歴史研究の成果の中で、中右記により信濃国に流罪となったのは、顕清ではなく盛清で、顕清は越前に流罪となり、且つ、盛清は顕清の弟で、兄弟の長兄である惟清(白河上皇呪詛事件の首謀者とされる)の養子であったことが判明したのです。
 しかしながら、尊卑分脈の記述がすべて間違いというのも早計であり、村上為国の実父が顕清であることからも、顕清が実際に村上郷へ移ってきた可能性を否定することは出来ません。というのも、盛清の紹介の中でお伝えしたように、盛清自体は、流罪の9年後康和5年(1103年)には京において「御監」の役を仰せつかり、その後も京都で活動していたことが判明しました。盛清自身は信濃村上氏の本拠地村上郷に居なかったのです。
                      
そのため、顕清が村上氏の本拠地に移り、信濃村上氏の礎を築いて、その子為国が跡を継いだという可能性を想定できる訳ですが、この為国もまた、村上氏の惣領でありながら、史料で確認できるのはすべて京都での動きばかりで、養父盛清と同様に京都で朝廷に仕える身であったことが分かっています。故に、為国の前の惣領を盛清とするのか、それとも顕清とするのか、その点について現状で判断することは非常に難しいと云わねばなりません。
 
 さて、この顕清については、さらにもう一つ大きな顔を持っています。それは信濃村上氏のみならず、瀬戸内海で有名を馳せた「村上水軍」の祖と伝えられる「村上定国」の実父として尊卑分脈に記されているからです。
 つまり、中世、日本の東西で歴史の表舞台で活躍することとなる両村上氏の血筋的始祖が源顕清ということになるわけです。
 つい先日、2014年の「本屋大賞」に輝いた 『村上海賊の娘』 和田竜(新潮社)について、このブログでも紹介されたように、村上水軍と信濃村上氏の関係は、その可能性を大いに秘めています。
 歴史的にそれらを実証することは非常に難しいのですが、このことについては、4月18日(金)から坂木宿ふるさと歴史館にて、信濃村上氏と村上水軍のコーナーを設けて、パネル展示にて紹介いたします。是非、この機会にご来館いただき、両村上家の関係について想いを馳せてみてください。
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(坂木宿 ふるさと歴史館 の紹介)

ふるさと歴史館

  戦国時代に甲斐の武田信玄を2度も打ち破った郷土の名将・村上義清と、江戸時代、北国街道の宿場町として栄えた「坂木宿」の歴史・文化をひもとく様々な史料を展示する歴史館です。また、建物自体が、昭和4年に建築された木造建築を、当時の面影を損ないままに修復した趣ある建物でもあります。

開館時間

午前9時~午後5時

(入館は午後4時30分まで)

休館日

月曜(月曜が休日の場合は翌日)・年末年始

展示室の観覧料

個人:100円

20人以上の団体:50円

(小学生及び町内中学生は無料)

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 坂城町長 山村ひろし

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