この章もなかなか面白いですね。 大人物と言える人は案外少しずれていたり、ちょっと面白いところがある。 というふうに考えてみると面白いですね。
大成若缺、其用不弊。 大盈若冲、其用不窮。大直若詘、大巧若拙、大辯若訥。 躁勝寒、靜勝熱。 清靜爲天下正。
大成(たいせい)は缺(か)くるが若(ごと)くなれども、其の用は弊(つまづ)かず。 大盈(たいえい)は冲(むな)しきが若くなれども、其の用は窮(きわ)まらず。 大直(たいちょく)は屈(くっ)するが若く、大功(たいこう)は拙(せつ)なるが若く、大辯(たいべん)は訥(とつ)なるが若し。 躁(そう)は寒(かん)に勝ち、静は熱(ねつ)に勝つ。 清静(せいせい)もて天下の正(せい)を爲せ。
大きく完成されたもの、あるいは人は、ちょっと見るとどこか欠けているように見えるものですがその働きはとどまることがありません。 真に充実しているものはどこか虚ろに見えることがあります。 本当にまっすぐなものはどこか曲がっているようにみえるし、素晴らしく技巧的なものはかえってどこか稚拙に見えることがあります。 また、素晴らしい演説は訥々としているものです。 うるさく立ちまわっていれば寒さしのぎにはなり、じっとしていれば暑さをしのぐこともできますが、静かに清らかに無為の状態でいれば世の中をさえ治めることが出来るのです。
ぎりぎりの百点満点を目指すのではなく、少しのゆとり、あるいはバッファを持てということでしょうか。
上記にある「冲(むな)しきが若く」について、伊藤若冲という有名な江戸期の画家(1716-1800)がいます。 この名は、禅の師であった大典顕常がこの老子の章からとり、与えたと言われています。
坂城町長 山村ひろし
伊藤若冲命名の由来、興味深く拝読いたしました。
「老子の提言」は中国の古典「菜根譚(さいこんたん)」同様、味わい深い内容ですね。