翔(かけ)る合戦屋

北沢秋(きたざわ しゅう)さんの合戦屋(かっせんや)シリーズの第3作が9月末に出版されました。

この合戦屋シリーズは、「哄(わら)う合戦屋 」、「奔(はし)る合戦屋」、「翔(かけ)る合戦屋」の3部作で、我が村上義清の活躍した16世紀中頃の中信濃を舞台に、一時、村上義清に仕えた天才軍師、石堂一徹(架空の人物)が縦横無尽に大活躍する戦国ドラマです。

 どうやらこの「翔(かけ)る合戦屋」でひとまず幕が下ろされるようですが、さらなる続編があればと期待したいところです。

 しかしながら、作者の北沢秋さんは後書きで 「ここでこの駄文の筆をおくこととしたい」 と書かれているのでいささか残念な心持ではあります。

 この3部作のストーリーを述べるのは控えますが、大変面白い、ある意味では奇想天外でダイナミックな戦国絵巻が語られています。

 石堂一徹は欲を持たない当代随一の軍師であり、一方、城攻めのための「攻城車」のような特殊な装置を開発したり、まるで諸葛孔明のような策略家でもあり発明家でもあります。

 いささか残念なのは我が郷土の誇り 「村上義清」 がこの天才軍師、石堂一徹を使いきれない凡庸な人物として扱われています。

 例えば、武田晴信(信玄)が大敗した「砥石崩れ」はこの石堂一徹の策であり、反面、圧倒的に優位にあった深志城攻めで、武田晴信の北信侵攻を恐れ、突然城の包囲を止めて、坂城(坂木)へ戻ってしまった村上義清を責めています。

                              

 この小説は村上義清が武田信玄に滅ぼされる数年前で終わっているために坂城(坂木)から越後へ落ち延びる最期が書かれていないのがせめてもの救いでしょうか。

 また、興味深いのは、石堂一徹が架空の人物のため、戦場で大手柄をたて、敵の大将を血祭りにあげてもその人物も架空の大将であることです。これは、架空の人物に歴史を書き換えさせない工夫のようです。

 いずれにしても、素晴らしく面白い戦国読み物であり、大変勉強にもなりました。

 秋の夜長、皆様にもお勧めします。

                                           

 坂城町長 山村ひろし

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